ついに実施開始!再生可能エネルギーのオンライン代理制御
2023.07.10
皆さんこんにちは!
新潟で自家消費型太陽光発電のことならテクノナガイにお任せ!
テクノナガイの渋谷です!
昨今の電気料金の高騰により今注目が高まっている『自家消費型』の太陽光発電ですが、
通常の売電金額より高く買い取ってもらえる『固定価格買取制度(FIT制度)』がスタートした当初は、
『自家消費』ではなく、売電して利益を得る『投資目的』で大きく広まったという経緯がございます。
今回取り上げるのは『自家消費』ではなく、『売電』を行う形の太陽光発電に関するお話です。
ある程度の規模の太陽光発電で売電している場合、電力会社からの『出力制御』要請に対応する必要があります。
最近、すでに設置済みのお客様からの『オンライン代理制御(出力制御)』に関する問い合わせが増えてきました。
2022年の制度改正により実施されることが決まった、この『オンライン代理制御』ですが、
いよいよ東北電力管内でも2023年春から実施され始めました。
すでに太陽光発電設備をお持ちで『売電』を行っている皆様にどのような影響があるのか
『出力制御』についての基本的なお話から解説します!
===目次======================
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まず、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの『出力制御』について簡単にご説明します。
そもそも、我々が使っている電気は基本的には電力会社の送電網から引き込まれたものを使用しています。
電力会社の発電所(火力発電所など)で作られたものや、太陽光発電などの再生可能エネルギー発電所から作られたもの
多種多様な発電方法の電気が合わさったものが供給されている状況です。
この送電網で電気を送る際には、電力会社が電気を送る『供給側』と電気を使う『需要側』のバランスを取りながら
送電量をコントロールしています。
このバランスが取れている状況であれば問題がないのですが、仮に電気を使う『需要側』が少ない状態で
電気を送る『供給側』が過剰な電気を送ってしまった場合は2つの問題が発生します。
1つ目の問題は、送ってしまった電気は蓄電池などがなければ蓄えることが出来ず無駄になってしまうこと。
こちらはあくまで無駄になるだけなので、そこまで問題がないように見えますが本当の問題は2つ目です。
2つ目の問題は、電力のバランスが乱れると電圧や周波数に影響が出てしまうからです。
日本の電源周波数は西日本・東日本でそれぞれ異なり、電気機器にもしっかり対応可能な電圧や周波数が決まっています。
電力の供給量と需要量のバランスにより電圧や周波数が変動すると、場合によっては電子機器や設備の故障が起きたり、
故障を防ぐために送電網の接続が解除され、停電が発生する可能性があります。
このため、電力会社は電力の需要と供給のバランスを取らなければいけません。
そこで実施されるのが『出力制御』になります。
そして、FIT制度を利用して通常より高い単価で売電を行っている発電事業者は、
FIT制度の認定を受ける際に『出力制御の実施』に同意して認定を受けているため、
電力会社から要請があった場合は必ず対応しなければいけないルールとなっております。
電力会社は事前に「●月●日、●●時~●●時に電力が余りそうだ」と予想を立てて、
発電事業者に『このタイミングは発電を止めてくださいね』という通達を出すことになります。
これが再生可能エネルギーを売電している方に義務付けられている『出力制御』というルールです。
<太陽光発電設備の出力制御実施対象>
※経済産業省 資源エネルギー庁 なるほど!グリッド より抜粋
現在出力制御の対象は、FIT制度の認定を受けたタイミングで『旧ルール』『新ルール』『無制限無補償ルール』の
3つとなっており、10kW未満(住宅や小規模事務所向け)は当面の間、出力制御対象外となっております。
先ほどの<太陽光発電設備の出力制御実施対象>の表の中で、
今までは出力制御実施対象外であった『旧ルールの10~500kW』の設備が2022年より対象となりました。
この変更になった部分が本日のメインテーマである『オンライン代理制御』の対象となる設備です。
(詳しくは次項目 2.再生可能エネルギーの『オンライン代理制御』とは? にてご説明致します。)
この『出力制御』は再生可能エネルギー発電所のみにかかるものではなく、一定のルールに基づいて対象となります。
<優先給電ルールに基づく対応>
※経済産業省 資源エネルギー庁 なるほど!グリッド より抜粋
この表を見ると、ある程度制御しやすい発電所や送電をベースにして制御しつつ、
4番目の選択肢として太陽光・風力発電のような再生可能エネルギーが対象となる形となっています。
数年前まで九州電力管内でのみ実施されていた『出力制御』ですが、2022年からは東北電力管内でも実施され始めました。
(その他、北海道・四国・中国電力管内でも実施あり)
そうした背景には、太陽光発電の導入が年々増え続けていることが影響しているという背景があります。
太陽光発電は、火力や水力、風力発電など他発電施設と比べて導入しやすいため、年々導入量が増え続けています。
メガソーラーなどの規模の大きい野立ての太陽光発電以外にも、住宅やカーポートなど建物の屋根上など
最近では様々な所で太陽光パネルが設置されているのを目にすることになりました。
皆様の中でも「太陽光パネルを置いてる所が多くなった」という印象を持たれている人も少なくないかと思います。
太陽光発電は非常に導入しやすい再生可能エネルギーですが、火力発電所のように発電量の細かい調整が出来ません。
晴れの日ではその地域の太陽光発電の発電量が一気に増えるため、電力供給のバランスが崩れる可能性があります。
これが最近頻繁に『出力制御』が行われるようになった要因と言われています。
(『出力制御』が起きにくくなるための対策もあるのですが、それに関しては
3.『出力制御』の今後についての予想 にて触れたいと思います。)
ここまで『出力制御』の基本的なお話をさせて頂きました。
そして、ここからは2023年より実施され始めた『オンライン代理制御』についてご説明致します。
<太陽光発電設備の出力制御実施対象>
※経済産業省 資源エネルギー庁 なるほど!グリッド より抜粋
『出力制御』のご説明の中でも取り上げた話になりますが
現在出力制御の対象は、FIT制度の認定を受けたタイミングで『旧ルール』『新ルール』『無制限無補償ルール』の
3つとなっており、10kW未満(住宅や小規模事務所向け)は当面の間、出力制御対象外となっております。
この中で、今までは出力制御実施対象外であった『旧ルールの10~500kW』の設備が2022年より対象となりました。
この変更になった部分が本日のメインテーマである『オンライン代理制御』の対象となる設備です。
各ルールの対象については、契約の申込日が基準となっております。
※東北電力ネットワーク 3-3.太陽光発電事業者さまへのお知らせ より抜粋
今回、『オンライン代理制御』の対象となる『旧ルール』が適用される発電所は、
2014年9月30日までにFIT申請を行った発電所となっております。
この『オンライン代理制御』については、経済産業省の該当ページに詳しく記載がございます。
※詳しくは下記ページをご覧ください。
経済産業省 資源エネルギー庁 なるほど!グリッド「経済的出力制御(オンライン代理制御)の精算方法等について」
こちらのページには制度や方法について詳しく記載してあります。
上記の内容、そして筆者が経済産業省・電力会社に問い合わせた内容を簡単にまとめると下記のようになります。
<現在の出力制御の形>
『オフライン出力制御』
→従来の出力制御 年1回出力制御の固定スケジュールを導入し、そのスケジュール通りに出力制御を行う
インターネットが繋げない環境で導入されるが、柔軟なスケジュール調整ができず、出力制御時間が多くなりがち
『オンライン出力制御』
→従来の出力制御 インターネットに繋ぎ制御することにより、固定スケジュールより柔軟な制御調整が行われる
制御が必要なタイミングで実施されるため、2023年8月現在ではオフライン出力制御より出力制御時間が非常に少ない
『オフライン代理制御』
→2022年の制度改正により行われることとなった出力制御
オンライン出力制御を行っている他発電所が代わりに出力制御を行い、代理制御された分が売電収入より差し引かれる
(詳しくは後述)
<オンライン代理制御の概要>
①2014年9月30日までに契約申込を行った10kW~500kW未満の太陽光発電所が対象
②2014年10月1日以降の契約申込を行った太陽光発電所は『出力制御』を実施のために、
出力制御の機器などを発電事業者負担で導入したが、『オンライン代理制御』の対象発電所は設備導入は不要
(設備によっては、数万~数十万かかる出力制御機器用の設備工事費・ネットワーク構築費が不要)
③すでに『オンライン出力制御』を実施している発電所が、代わりに出力制御を実施し、代理制御分の対価を得る
『オフライン代理制御』の対象発電所は、本来出力制御を受けたとみなし、その分の対価支払いが差し引かれる
※オフライン代理制御の代理制御分は、発電所に適応されている調達価格で算定された基準を基に決定
④『オンライン代理制御』の出力制御の清算比率は、『オンライン出力制御』と比較すると、
非常に多くの日数・時間で出力制御を行った扱いで清算される(『オフライン出力制御』と同等)
⑤『オンライン代理制御』の対象発電所も、手続きを行うことで従来の『オンライン出力制御』への変更が可能
(オンライン出力制御に必要な出力制御機器の設備工事費・ネットワークの構築費に関しては、発電事業者負担)
※一度『オンライン出力制御』に変更すると、『オンライン代理制御』には戻せなくなります
簡単にまとめると以上のような形となります。
『オンライン代理制御』の場合は、従来の出力制御対象と違い、出力制御機器やネットワーク構築費が不要となるので
金銭的にもメリットがあるように見受けられるのですが、『オンライン出力制御』と比較すると
非常に長い時間・日数での出力制御が働いた形で清算がされています。
(東北電力管内で確認したところ、『オフライン出力制御』と同等の時間・日数となるようです。)
実際弊社にも『オンライン代理制御』について
「実際にオンライン代理制御された分が、売電収入から差し引かれたが想像より多い金額が差し引かれていた」
「差し引かれる金額が多いので『オンライン代理制御』から『オンライン出力制御』への切替を検討したい」
というようなお問い合わせも頂いております。
太陽光発電協会(JPEA)にも『太陽光発電のオンライン制御化に向けて~オンライン化の費用対効果等について~』があり、
『今後、オンライン制御化を目指していく』
『オンライン制御に変更することにより、出力制御量が減り、経済的メリットを得られる』
というような資料が公開されていることから、今後はそのような方向で舵切りを行っていくものと思われます。
ただ、難しいところが今回この制度が適応になる旧ルールの太陽光発電設備は、
2014年9月30日までに契約申込を行っている比較的稼働年数の多い太陽光発電所が対象となります。
すでに9~10年以上と太陽光発電設備も稼働しているため、パワーコンディショナーの入替も検討されるタイミングです。
『オンライン出力制御』に対応するためにも場合によっては障害があり、
「既存のパワーコンディショナーが出力制御に未対応のため
パワーコンディショナーを全て入れ替えなければいけない」
「すでにメーカーが太陽光発電から撤退しており、出力制御用のオプション機器が手に入らない」
というようなお話も一部耳にします。
もちろん、その発電所ごとに規模や設備も違うため
『オンライン代理制御』のままで様子を見る
既存設備のまま『オンライン出力制御』に変更するために申請・出力制御機器の導入をする
10年目にパワーコンディショナーを全てリプレースする際に『オンライン出力制御』に切り替える
など、様々な対応方法があります。
『オンライン出力制御』に切り替える際には、申請や設備工事が伴う場合もあり、ある程度時間がかかってしまいます。
ぜひ『オンライン代理制御』の対象の発電事業者様は、現時点での状況を踏まえて、電力会社に確認をしてみる。
また、当時の施行業者に確認をして今後の対応を決める など、早め早めに動いてみるのがよろしいかと思います。
2023年8月現在、一部地域では2022年まで以上に出力制御がかかっている状況が見受けられます。
特に九州・中国・四国電力管内での2023年春の出力制御が急増し、大きな問題となっています
これを受け、再生可能エネルギーの導入を進めたい国としても今後対策に乗り出していくなど、動きが見受けられます。
実際、この『出力制御』という制度は今後どのようになっていくのでしょうか。
筆者の予想にはなりますが、今後数年は今までと同等かそれ以上に『出力制御』の比率が高まるのではないかと予想しています。
理由としては、やはり年々太陽光発電の導入数が増えていることが挙げられます。
特に今年は、昨年からの電気料金高騰の影響もあり、太陽光発電設備の導入が住宅・法人を問わず大きく増えています。
近年は、基本的に自家消費での使用をメインとした太陽光発電設備が増えていく形にはなっています。
となると、太陽光発電が期待できる春~秋の日中電力量の需要が多少低下する可能性が多いにあり、
なおかつ、余った電気をFIT制度を利用して余剰売電される方もいらっしゃいますので
電力の需要供給のバランスがさらに取りにくくなるのでは?と予想しています。
(もちろん、ここは電力会社や国も承知の上かと思いますが・・・)
とはいえ・・・
もちろん経済産業省も2023年春の出力制御率の高さを受け、すでにいくつか追加施策を打ち出してはおります。
施策の2024年度からの実施を目指し、「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン』の改定を予定しています。
主な内容としては、
①新設の火力発電の最低出力を従来の「50%」から「30%」に引き下げを行うこと
→当初2025年度を予定していたものを1年前倒し
②既設の火力発電所にはガイドライン改定の遡及適用はないが、基本的に新設火力発電と同様の基準順守を求めること
→ガイドラインの2024年度改定を待つことなく、最低出力基準30%を順守するように求めていく
③広域的な出力制御の運用を導入し、あるエリアで供給が需要を上回ると判断される場合は、
他エリアでも火力発電の出力を引き下げる
などとなっております。
また一部では、電力系統に大型蓄電池を設けること(系統蓄電池の導入)で出力調整がしにくい太陽光発電など
従来であれば『出力制御』の対象となるような供給過多になってしまう電気を溜め、
不足時に放電することにより電力の安定供給を行う動きも出てきており、国や自治体の補助も昨年から出始めています。
実際に、国として推し進めている太陽光発電のような再生可能エネルギーの普及と、電力のエネルギーバランスを
保つために系統蓄電池の導入は切っては切れない関係です。
電力会社サイドでも各発電所の調整だけでなく、より電力を安定供給するための系統蓄電池の導入などが
今後大きく進んでいくと予想されていますが、制度面や設備導入費用の大きさなど、まだまだ課題は大きい状況です。
この部分のバランスが取れないうちはまだまだ『出力制御』は起きてしまうのではないかと予想します
筆者としては、10年前に再生可能エネルギー発電設備の導入を促すために大手を振ってFIT制度を導入開始したのであれば
当初の再エネ発電設備の導入に際して貢献した事業者の皆様が、大きく不利益を被らないような制度の調整を
ぜひ国や電力会社には頑張っていただきたいな と思う所です。
今回は『オンライン代理制御』に関するお話でした。
最近本件に関するお問い合わせも増えてきたので、筆者なりに調べた内容をまとめさせて頂きました。
数年前に東北電力管内で『出力制御の対応依頼』が各発電事業者様に送られた際も、
メーカーや施工店各社で対応に苦慮したことも記憶に新しいところです。
今回はその時とは違い、すでに『オンライン代理制御』が始まっており、特に追加設備の導入などは不要となっています。
が、やはり実際に売電金額から差し引かれる代理制御分の金額を踏まえると、
今後『オンライン出力制御』への切替を検討される方も多いように思えます。
『オンライン出力制御』に切り替える際に、申請や設備工事が伴う場合もあり、ある程度時間がかかってしまいます。
現在『オンライン代理制御』の対象で、『オンライン出力制御』への変更を検討される発電事業者様は
現時点での状況を踏まえて、電力会社に確認を行う
当時の施行業者に確認をして、今後の対応を決める
など、早め早めに動いてみるのがよろしいかと思います。
新潟で自家消費型・産業用・住宅用の太陽光ならテクノナガイソラーレ!
本日もお読みいただきありがとうございました!